脳卒中

1.はじめに

(1)脳卒中とは

 脳卒中とは:急に意識を失って倒れ、半身の麻痺などの症状が出ること。

「脳卒中なんて自分とは関係ない」あるいは「自分は大丈夫」と安易に考えている方がほとんどです。しかし脳卒中はたいてい何のまえぶれもなしに突然やってきます。つまり脳卒中にかかってから「しまった」と思っても遅いことがほとんどなのです。そこで普段から「自分だけは大丈夫」などと油断しないで、予防に心がけておくことが大切です。

(2)脳卒中の現況

脳卒中は長く日本人の死亡原因の第1位でしたが、最近は、?癌、?心臓病、?脳卒中となり第3位となっています。 しかし亡くなられた方の数ではなく、実際に脳卒中にかかった人の数でくらべてみますと、これは癌や心臓病にかかった方の数よりはるかに多いのです。

 脳卒中にかかれば、軽くても手足の麻痺などの後遺症が残ります。すなわち脳卒中により重いハンディキャップを背負った方、あるいは寝たきりとなった方の数は、現在でも減ってはいません。  

(3)脳卒中の原因

  1. 脳の血管が破れて出血する脳出血
  2. 脳の血管がつまって血液が流れなくなる脳梗塞(のうこうそく)   

以下では、脳卒中を起こす代表的な病気について、さらにその予防について説明します。

2.脳出血について

   脳出血には、脳内出血、くも膜下出血などがあります。

(1)脳内出血

原因:主として高血圧が関与 症状:脳のどこに出血するかによって、症状が異なります。典型的には、突然の頭痛・嘔吐、さらに意識が悪くなり、半身の麻痺が出現します。急にはげしいめまいが見られることもあります。

治療:手術することもありますが、手術しないことも多い。

予後:ほとんどの方で半身麻痺などの後遺症が残ります。

(2)くも膜下出血

原因:脳動脈の瘤(こぶ)や血管の奇形などからの出血

症状:

  1. 突然のはげしい頭痛(今までに経験したことのないような痛み)
  2. 嘔吐
  3. 意識障害

治療:手術

予後:1/3は死亡、1/3は後遺症あり、1/3は元の状態

3.脳内出血の予防

脳内出血は普段から血圧の高い方に多いのですが、実際に脳出血が起こった時の状況を調べてみますと、寒冷や興奮などでいっそう血圧が上昇した時にみられています。

脳出血を予防するには、普段から血圧のコントロールに 加え、急激な血圧の上昇を避けることが大切です。

自分が高血圧であることを知らないまま、脳出血にかかって初めて血圧が高かったことに気づかれる方が結構おられます。

高血圧の怖いところは、高血圧そのものによる症状がほとんどないため、血圧が高くてもそれに気づかない、あるいは高いと分かっても治療を受けようという気になりにくいことです。 しかし血圧が高ければ、月日の経過とともに、確実に体はむしばまれていきます。そしてそうこうしているうちに何年もが経過して、手遅れになってしまうことが多いのです。

血圧を上げる原因および要因

?塩分の取りすぎ 日本人の食塩摂取量は、以前は1日15〜20グラムでしたが、最近では1日12グラム程度にまで下がっています。1日7〜8グラムの食塩摂取量に減塩するためには、以下の注意を守れば達成可能であります。

  • 漬物・佃煮・梅干・干物など塩分の多いものは避ける。
  • 味噌汁は、具を多くして汁を少なくする。
  • 食卓塩・醤油・ソースなどをむやみに使わない。
  • 調理にあたって、香辛料・酢・レモン・ゆずなどをうまく利用し、塩分の使用を減らす。
  • 香りのある野菜(みつば、セロリー、青ねぎなど)、のり、花かつおなどの風味を利用する。
  • すし飯、味付けご飯、丼物、外食などを控える。
  • 麺類のだし汁は飲まないで残す。
  • インスタント食品を控える。

?アルコールの飲みすぎ 大量のアルコール飲用者では飲まない人にくらべ脳卒中にかかる率が4倍になるという報告があります。血圧の高い方は、なるべくお酒を控えましょう。またお酒には結構カロリーがあり、肥満の原因となることもあり注意が必要です。

?寒冷 寒さは末梢血管を収縮させ血圧を上昇させます。その結果、血圧は一般に冬に高くなります。

寒い時期には暖房を入れ、室内を常に暖かくしましょう。なかでもトイレや風呂場は特に寒い場所ですから、この場所の暖房に気をつけることは脳出血の予防にとても大切なことです。 また外出時には薄着を避け、重ね着をして温かい服装ででかけるようにしましょう。

?肥満および運動不足 高血圧の方は肥満を避け、運動不足に注意しましょう。すなわち血圧が高く太りぎみの方は、カロリーを制限し、やせる必要があります。また散歩やラジオ体操などの運動を積極的に取り入れ、なるべく歩くようにしましょう。 一日に、最低30分は歩くようにしましょう。

4.脳梗塞について

 脳梗塞とは、脳の血管がつまる病気で、太い血管や細い血管など、どの血管がつまるかにより、症状が異なります。典型的には、半身の麻痺、半身のしびれ、言語障害(ろれつがまわらない)などの症状が見られます。痴呆症状でわかることもあります。

5.脳梗塞の予防

脳梗塞を起こしやすい要因としては、以下のことが考えられます。

  1. 高血圧 高血圧は動脈硬化の進行を早め、血圧の高い方ほど、脳梗塞をおこしやすい。
  2. 糖尿病 糖尿病をもっている方は、脳梗塞をおこしやすい。
  3. 高脂血症 高脂血症の患者さんは、脳梗塞を起こす前に、心臓病をおこすことが多いが、動脈硬化が進み、脳梗塞もおこしやすくなる。
  4. 喫煙 タバコは動脈硬化の進行を早め、脳梗塞をおこしやすい。
  5. アルコール 少量のアルコール(日本酒で一日1合程度)摂取では、脳梗塞の発症を減らしますが、飲酒量が増えると、予防効果はみられません。 ただし、脳出血の発生はアルコール量が多いほど、多くなるので注意が必要です。
  6. 脱水を避け、水分を十分にとる 脳梗塞は脱水(体の中の水分が不足している状態)の時におこることが多く、そのため汗をかいて脱水になりやすい夏に多いのです。これは脱水により血液がドロドロの状態になりつまりやすくなるからです。夏の暑い時のゴルフやテニス、登山には注意が必要です。

 したがって、暑い時期に汗をかいたなら、それに見合う十分な水分を補給することが、脳梗塞の予防となります。

脳梗塞を予防するには、高血圧・糖尿病・高脂血症などの治療が必要です。